2つの感性をもつ画家
冷淡な表現と炎のような情熱をあわせもつ画家、フェリックス・ヴァロットンの日本初の回顧展が、6月14日~9月23日、東京丸の内の三菱一号館美術館で開催される。
ヴァロットンはスイスで生まれ、19世紀末のパリで活躍した。独自の視点から生み出された作品は重層的な深みをもち、鑑賞者からさまざまな感情を引き出す。
鋭くクールな視線で日常を切り取る
日本発の回顧展となる本展では、120点の油彩画と版画を展示。“欲望と禁欲の間の葛藤”を、なめらかで冷ややかに描き出す独特の世界観を紹介する。
代表作のひとつである「貞淑なシュザンヌ」(1922年)は、旧約聖書の場面「スザンナと長老たち」を題材としたパロディ。旧約聖書では、“貞淑な妻スザンナが好色な老人たちに水浴をのぞかれる”という設定だが、ヴァロットンは男女の力関係を逆転させ、“娼婦であるシュザンヌ(スザンナの仏語読み)が無防備な男たちを誘惑する”場面として描き出している。
関連イベントとして、フェリックス・ヴァロットン財団名誉学芸員や美術ジャーナリストによるトークイベントも開催され、謎に満ちた作品世界をより一層楽しめる内容となっている。

ヴァロットン― 冷たい炎の画家
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