アジアでは初の大規模個展
東京都港区の、六本木ヒルズ森タワー53階にある森美術館では、2015年10月12日までのスケジュールで『ディン・Q・レ展:明日への記憶』を行っている。会期中は無休で、開館時間は10:00から22:00(火曜日のみ17:00)まで。なお入館時間は閉館時間の30分前までとなっている。
ディン・Q・レは世界で最も活躍するベトナム人アーティストではあるが、アジアでの大規模個展は今回が初となる、記念すべきものである。この個展はレの作品とユニークな活動を通し、過去と現在、そして未来について考えるというテーマがある。
ポル・ポト政権の侵攻を避けるため渡米しアートを学ぶ
レはカンボジアとの国境付近であるベトナムのハーティエン出身であったが、当時のカンボジアはポル・ポト政権時代であり、その侵攻から逃れるため、家族とともに10歳のときに渡米した。
アメリカで写真とメディアアートを学んだ後、ベトナムの伝統的なゴザ編みから着想を得た、写真を裁断してタペストリー状に編む「フォト・ウィービング」シリーズ(1989年から現在も続いている)を発表したことにより、一躍注目されることとなった。
市井の人々の実体験をピックアップしている
そして国際舞台にて評価される出世作となった映像インスタレーション作品は、自作のヘリコプター開発に挑むベトナム人男性を中心に、ベトナム人と戦争との複雑な関係を巧みに描き出した作品の「農民とヘリコプター」(2006年)である。
レは作品制作においては綿密なリサーチとインタビューを行っており、人々が実体験として語る記憶に光を当てている。
今回の個展が開かれている2015年はベトナム戦争から40年、日本にとっては戦後70年の節目の年である。
いままでは市井の人々の物語は「公式な」歴史では語られることのなかったが、この年をきっかけに読み直すきっかけにもなるため、今一度アートと社会の密接な関わりを探ることを重要な課題としている。

ディン・Q・レ展:明日への記憶
http://www.mori.art.museum/contents/dinh_q_le/index.html