伊東深水の60点余の素描
東京都港区にある、伊勢丹本店 紅ミュージアムは現在開館10周年記念の企画展として、『伊東深水が見た像(リアル) -美の軌跡・素描-』を11月29日までの日程で行っている。
休館日は毎週月曜日(祝日または振替休日の場合は翌日が休館日となる)で、開館時間は10:00〜18:00(入館は閉館の30分前まで)。
伊東深水(1898〜1972)は、大正から昭和期に活躍した美人画の巨匠で、今なお幅広い人気をもつ。
この展覧会は、深水の後継者であった次男の伊東万燿(いとうまんよう)の遺族が所蔵していた未公開の素描作品の展覧会である。美人画や裸婦、そして南方風俗などの人物画を中心に60点余の展示が行われている。
日本画における素描の扱いとは
日本画の制作工程だが、スケッチに始まり、それを素描に書き起こし、下絵制作を経てからようやく本画にとりかかるというものとなっている。
そのため素描はあくまで舞台裏のものとされ、絵画ではあるが通常鑑賞用としては扱われていない。だが素描には画家本人が被写体を見て感じた素の情報がつまっている、重要な構成物となっている。
深水は子供のころに人物画家になろうと決意したのだが、そのころから過剰なデフォルメを嫌い、あくまでも正確な写生にこだわる作風をとっていた。しかし、同時に画家による個性の表現も追究していたため、人物の自然な動きも画題のひとつとして追究していた。
そのため今回の素描からは、日常のさりげない立ち居振る舞いや表情、女性美を象徴する「紅点し」「白粉化粧」「結髪」などの表現に深水の深い観察力が注ぎ込まれ、揺るぎない写生力が発揮されている。
画家の心情に直接ふれることのできる珍しい機会であるため、足を運んでみてはどうだろうか。
(画像はホームページより)

開催中の企画展 伊東深水が見た像(リアル)
http://www.isehanhonten.co.jp/museum/exhibitions.html