東西文化の融合を為したゆえに苦しみにさいなまれた画家
東京都府中市にある府中市美術館では、2016年12月11日(火)の期間まで「藤田嗣治展 -東と西を結ぶ絵画-」展を行っている。
国内外の代表作によって藤田の作品世界の全貌を紹介する構成となっていて、大作を含んだ110点という多くの作品を見ることができる展覧会だ。その中には近年ランス市に寄贈された未公開作品も混ざっている。
そしてこの多数の絵から藤田の創作の歩みをたどりつつ、東西文化の融合と対立によって苦しみや葛藤にさいなまれた生涯に注目しつつ、「描くこと」に真摯に向き合った画家の姿を映し出す構成になっている。
藤田嗣治の生涯とその評価
藤田嗣治(1886-1968)は西洋絵画の伝統と正面から向き合った画家である。26歳でパリに渡り、試行錯誤の末に独自の画風で一躍パリの寵児となった日本人だ。
なお藤田はその絵の製法を決して語ることがなく、乳白色に輝く下地に面相筆で惹かれた流麗な墨の線という日本的で繊細な美意識を抱えて描かれた技術で、裸婦や自画像といった西洋の古典的な作品を描いた。
このようにその画題で西洋絵画の伝統と正面から向き合うことで、ヨーロッパの人々に真に認められることを目指したのである。この形はまさに「東と西を結ぶ絵画」と呼べる。
だがパリでの評価が高まるにつれ、日本画壇からは嫉妬と羨望が入り交じった反応をうけるようになり、くわえて戦後は戦争画制作の責任を問われるようにもなり、藤田は追われるように日本を去ることとなる。
なお藤田はその後フランスでキリスト教に改宗し、祖国との間で生まれた傷を癒やすように祈るように創作の日々を重ねていき、晩年は礼拝堂の建設と壁画制作に没頭し、81歳で没した。
休館日は毎週月曜日(10月10日は祝日のため開館)である。開館時間は10:00から17:00(入館は閉館の30分前)までである。
藤田嗣治展 -東と西を結ぶ絵画-
http://foujita-fuchu2016.jp