広重の弟子ということくらいしか分かっていない
東京都渋谷区にある浮世絵専門の美術館である、太田記念美術館では2017年1月5日(木)から1月29日(日)までの期間、企画展「お笑い江戸名所 -歌川広景の全貌」を行っている。
歌川広景(うたがわ・ひろかげ)は初代歌川広重の弟子であるということくらいしか分かっていない謎の絵師である。生没年は不詳。
展覧会ではその代表作である「江戸名所道戯尽」全50点を一挙公開する。このシリーズは笑いとばかばかしさにあふれえいる江戸っ子ならではの感性で描かれた浮世絵であるといえる。
今回は「青物魚軍勢大合戦之図」や、「東都冨士三十六景」といった他の作品も合わせて展示し、この絵師の全貌に迫る構成となっている。
先輩絵師へのリスペクト? パクリ?
今回展示する「江戸名所道戯尽」は、葛飾北斎や歌川広重の作品と部分的ながらも似ている個所が多々見られる。
そのためこの展覧会では北斎や広重の作品も合わせて展示し、広景のアイディアの源泉および、北斎や広重が次世代の浮世絵師に与えた影響について掘り下げている。
とはいえ浮世絵の世界では、他の作家の作品を真似ることは珍しいことではない。
初代歌川広重からして、おそらくリスペクトからくるものだろうが葛飾北斎と構図がほぼ一緒の作品がある。
狐火で有名な王子稲荷を題材にした作品も
とくにピックアップされる一点としては、「江戸名所道戯尽 十六 王子稲荷」がある。大きなザルに座った人間をキツネが大名行列のまねごとをし、化かしているという面白い作品がある。
キツネは挟み箱の代わりにかぼちゃを担ぎ、毛槍の代わりにトウモロコシをくくりつけた竹をかかげているというユーモラスなものだ。
なお王子稲荷という場所は、大晦日の夜になるとキツネたちが王子稲荷にあつまり狐火が発生しているため、近隣の農民はこれを見て翌年の農作物の豊凶を占った、という言い伝えがある。
休館日は毎週月曜(9日は開館)、1月10、16、23日であり、開館時間は10:30から17:30(入館は17:00まで)である。
(画像は太田記念美術館トップページより)

太田記念美術館 企画展 お笑い江戸名所 -歌川広景の全貌
http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/exhibition/hirokage-edomeisho